好きで太っているわけではない。

谷町線の南のはて、八尾南駅。最終電車が定刻に到着。

雨が滴る啓蟄。冬ごもりしていた虫たちが蠢き始めるのとは裏腹に、改札には人がまばら。

ビニール傘を2本握りしめ、構内を伺う今風の男性。

そこに駆け寄る小柄な女性。

それを見つめる大太りの僕。

頭をポンポンと撫でる男性、

手を握りしめる女性。

唇を噛みしめる大太りの僕。

傘を差し出す男性。

首を横に降る女性。

意味がわからず首をかしげる大太りの僕。

1本の傘をさす男性。

それに寄り添う女性。

雨に打たれる大太りの僕。
折り畳み傘を取り出すも体がはみ出す大太りの僕。

この雨はきっと僕の涙雨だと思う。濡れているのは僕のすさんだ心だった。

死ぬまでに相合い傘をしてみたい。あわよくば手元に傘を余らせて。

そういえばずっと昔、突如の夕立で誰も傘を持たない中、たまたま前日に持って帰るのを忘れた傘を持ち歩いていた僕が、どしゃ降りに困っている女性に傘を差し上げて雨に打たれながら帰っていると、傘をさしながら傘を持って駅に走る男性とすれ違った。振り返ると、その男性は僕の傘をさす女性に駆け寄っていた。

どしゃ降りなのは僕の心だった。

死ぬまでに相合い傘をしてみたい。だけど大太りの僕はどんな傘でも独り用になってしまう。