回転寿司屋に潜むアウトレイジ

「この鰻丼を2つだ!」

「次お伺いしますのでお待ちください。」

「だからこの鰻丼を2つと言っているだろ!」

ゼンマイの壊れた人形のようにカクカクと動きながら同じことを怒鳴り付ける70歳前後のおじいさん。
現役時代は役職に就いて稼ぎがあったのか、身なりは小綺麗でそれなりにお金は持っている雰囲気である。

「こちらのお客様が済み次第お伺いしますから。」

「この鰻丼を2つ持って帰るんだ!」

ちなみにこちらのお客様とは僕のことで、某回転寿司のお店で食べ終わって精算しているときに巻き込まれた事案である。

「それではこちらの注文表の該当欄に数量をお書きの上お待ちください。」

「何度いったらわかるんだ!この鰻丼を2つだ!」

何度言ってもわからないのは誰がどうみてもこのくそじじいである。

「1,944円です。」

「680円の鰻丼が2つでなぜそんなに高いんだ!」

1,944円は僕に向けられて発せられた金額である。

「こちらのお客様のお会計です。」

「ところでこの用紙のどこに何を書けば良いんだ!」

それにしてもくそじじいには僕が見えていないのか、お構いなしに鰻丼ロードを突き進もうとする。
現役時代の役職が高くて偉そうなクセが抜けないのか、レジのニキビ面のブサイクメンズを圧倒し続ける。

ちなみに葬儀屋に聞いた高飛車で二度と関わりたくない嫌な職業は教師と警察官というのを週刊SPA!で見たことがあるが、ひょっとするとその筋かもしれない。

「こちらの鰻丼と書いている横に2とお書きください。」

「鰻丼はこれか!ここに2で良いのか!」

っていうか、このくそじじいをここまで駆り立てる鰻丼はそんなにも美味しいものなのだろうか。そしてしきりに2つを連呼するわけで誰かと一緒に食べるのだろうか。

食べすぎてなかなかの金額を支払った僕は一人だと思われるのが恥ずかしく、誰もいない方向に向かって「木村もういいよ、帰ろう。」と呟いて店を出たところ、くそじじいは自分のことを言われたと思ったのか、

「誰に向かって言っているんだ!」とわめき散らしてらした。

とんでもない勘違いによって回転寿司のお会計という場で奇跡的にアウトレイジが再現されたことは、北野映画の真骨頂であり、秋に公開されるアウトレイジ最終章がますます楽しみになり、まずはまもなく公開の昼顔を観に行きたい、どうもセクシー俳優、斎藤工です。